認知症へのガッテン
2004年12月10日毎日新聞掲載
文:立川志の輔

 思い違い、思い込みというのは、それと知ったとき、今までなんて何も知らなかったのだろうと、驚きと同時に、新しい認識をもった喜びも。

 冷え性の人は冷たい手足をさすったりお湯につけたりしますが、実は首の後ろを温めるほうが効果的だ、ということを知った時の驚き。

 また、昔は、運動や山登りの際には水分をとり過ぎるといけないと言われ続け、近年ではむしろ水分をとらなければいけない、と変化してきました。これはいったいどういうことだろう? 人の体が変わったわけでもないのに。

 実際は、水分は水分でも単なる水ではなくて、塩分が含まれているスポーツ飲料ならとってもいいということなのでした。

 そういえば、昔はスポーツドリンクはなかったので、水分全般のとり過ぎを戒めたのでした。

 このように、日々、認識を新たにしていかなければなりません。

 前々回の当コラムで、痴呆症から認知症への言い換えに触れ「痴呆になったと痴呆の人が聞いたら気を悪くするだろうから、という懸念でもあったのか。でも、気を悪くするぐらいなら痴呆じゃないだろうに、と突っ込みたくなります」と書いたところ、読者の方からお手紙をいただきました。

 私の痴呆症に関する理解の浅さを指摘してくださいました。

 「痴呆症は、アルツハイマー病や多発性脳梗塞などの種々の原因によって、脳細胞が死滅していく病気です。でも、初めから何も分からない訳ではありません。発病した初期にはなんとなく体調に違和感を覚えたり、直近の記憶に障害が出たり、時々慣れた所で道に迷ったり、今まで使えていた道具が使えなくなったりします。でも、字は読めますし、書くこともできます。パソコンも使えます。碁や将棋などもできます。ピアノなどの楽器の演奏もできます」とあり、病気が進めばもちろん身体的機能が徐々に失われていき、家族の顔も分からなくなるということです。

 でも「そこに至る数年から10数年は、まだまだいろいろなことが分かるのです。特に、感情やプライドはしっかり維持しているのです」と。

 なので、痴呆症前期の人が「痴呆症」という病名を告げられた場合、激しい屈辱の中に落ち込む。そうならないためにも「認知症」への言葉の言い換えは、世間の偏見が消えることになる第一歩なのだと締めくくられていました。

 なるほど、なんとなく痴呆症に抱いていた考えが変わりました。

 いろんな段階が含まれている「認知症」。

 ご指摘のおかげで新たなガッテンができました。

 さらなるガッテンに向かうためにも、皆様のアドバイスをとても頼りにしている私です。


バックナンバーへ戻る