お歳暮の賞味期限に悩む
2004年12月3日毎日新聞掲載
文:立川志の輔

 先日、長野県飯田市伊賀良(いがら)の落語会へ出かけ、いきつけのラーメン屋さんで食事後、おいしい柿が出て来ました。

 主催者が言いました。

「本当なら、今頃は家々の軒先に干し柿がずらーっと吊されているはずなんですけどねえ」

 本当なら、の言葉にひっかかった私がわけを聞くと、衛生上の理由で数年前から干し柿を外に干さなくなったのだそうです。おまけに、とその人は話を続けました。

 干し柿の表面の白い粉を柿が腐ってる証拠と思う人もいるらしく、賞味期限までつけなきゃいけなくなったと。

 賞味期限、現代の魔物です。

 パルコ公演の楽屋にもたくさんの差し入れを頂いて本当にありがたかったのですが、この季節はお歳暮の季節でもあります。贈ったり贈られたりで、事務所や自宅に届くお歳暮には賞味期限がついたものも多数。

 生ものならばいざ知らず、こんなものも腐るの? と驚くこともしばしばです。

 その上、保管場所に指定があり、冷凍庫、冷蔵庫、冷暗所とさまざまな方法が推奨され、もっと凄いのは、開封前は冷暗所で、開封後は冷蔵庫で、というものまで。

 事務所スタッフは、何一つ無駄にはしたくないばかりに、小さな冷蔵庫と届いた品物の間で悩み続けます。

 冷蔵庫の奥にある賞味期限切れのものを見つけたときなど、小さな討論会が始まります。

 「このウニの瓶詰め、もう期限が1週間も過ぎているからだめじゃないかなあ」

 「1週間ぐらい大丈夫でしょう」

 「食べてみる?」

 「もしなんかあったら嫌だよなあ」

 「火を通せばいいんじゃない?」

 「どんな料理にするの?」

 「そうねえ、料理法を思いつくまで、ひとまず冷蔵庫へ」

 こうして、冷蔵庫内は食品群がひしめきあうことに。なまじ数字が書いてあるだけ悩みも深くなります。

 結果、冷蔵庫で腐っていく食品が増えていくということに。

 わが師匠談志は、常々「縁あって我が家に届いたものは、きちんと食べきってやらねばかわいそうだ」というのが持論で、日々、食べ物と格闘しています。

 そしてついに師匠は斬新な行動に出ました。

 今年はお歳暮はいりません、ほしいものがあったらこちらから電話するから、という手紙を各所に出しました。

 食べ物を大切にすればこその手紙ですが、もらったほうは、さぞ驚いたでしょう。

 パンフレットで、賞品と時期を選べるシステムも便利ですが、商品そのものが突然届く魅力も捨てがたい。

 でも、つまりはこちらも贈ってるから贈られてくるわけで、相手の方も同じように悩んでいるのでしょうねえ。


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