高齢者を狙うオレオレ詐欺の多発。
オレオレ詐欺だからと言って「もはや相手は開口一番にオレオレと言うわけではない」という取締本部の注意に深くうなずく私。
日本に多額に眠っている高齢者の貯金を狙う、卑劣で頭のいい連中をなんとかこらしめる方法はないものか。
最近は、何人もが入れ替わり立ち番わり警察官や弁護士の役を演じて電話をかけてくる劇団型もあるというから手がこんでいます。
敵がそうなら、こちらだって頭のいい方法で撃退したい。
で、思い出したのが、私が劇団員だった夢多きころの話。
そうなんです、私、アルバイトをしながら演劇を学んでいたのです。
安部公房の「友達」に出てくるお父さんの役を卒業公演でやったこともあるのですから。
それは、こんなストーリーでした。
マンションで一人暮らしの男のところへ、ある夜、謎の一家が突然やってくるという不思議な物語です。
「どちらさまですか?」と尋ねる男に、「いやいやお構いなく」と言いながら次から次へと知らない家族がズカズカ上がり込み普通に暮らし始めます。
客席から見ているとどう考えたって不法侵入をする一家の方が変なのですが、家主である男の方はどんどん追いつめられ、オレの方がおかしいかもと思わせられるようになります。
家族は男に言います。
「ここは、あなたが自分の家だと思っているだけなのよ。それにほら、皆でいる方が楽しいでしょう?」
徐々にくずれていく認識。そもそも認識とは何なのか。実はもろい認識。
不条理は今ならごくあたりまえに芝居のテーマになっていますが、あの頃の私にとっては衝撃的なテーマでありました。
はっきり芝居の意味もわからぬまま、不条理なお父さんを演じた私。
そんな稽古中、私が一番腹が立ったのは、苦心の末やっと役の気持ちになれて気持ちよくセリフを発し、自分の演技に酔っている途中にいきなり、その気持ちをぶったぎるような、演出家のボンボンと手を打つ音と声でした。
「は〜い、ちょっと待って。ぜんぜん気持ちが違うよ。いま、その役はそうじゃないだろう?そんなことを思っている人が、そんなことをするか?ハイ、もう一度、初めっから。ヨーイ、ハイ!」
この瞬間ほど嫌な気分になったことはありませんでした。
演出家を恨みました。(で、自分で演出する落語家になったってわけ、でもありませんが)
この気持ちを思い出して、そうだ、この事が使えるぞと思いついたのです。劇団・オレオレが電話の向こうで演技を始めたら「はいはい、もういいよ。何度言ったらわかるのかな?そんな演技では誰もお金払ってくれないよ。これ以上やっても無理そうだから、今日は解散!」
「なにィ、こっちだってやめてやる!」
と言い返しでもしたら、うまい具合に仕返し成功となるんですけどねえ。
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