50の手習い、ゴルフ
2004年10月8日毎日新聞掲載
文:立川志の輔

 いまさらゴルフにはまるなんて思ってもいませんでした。

 正直に告白すると、ついこの前までは、ゴルフを話題にする人に対していやな感じを抱き、避けてすらいました。

 とは言いながら、仕事上のお付き合いもあるので、地方の落語会へ出かけたときなど、主催者から誘われれば5回に1回くらいはグリーンに出ていました。

 そういう意欲のなさで取り組んでいれば、何事もうまくいくわけがありません。

 こう見えても、かつてはソフトテニスインターハイ選手だったんだぞ、球感にかけて俺だって引けはとらないはず、と心の内で豪語してみても、肝心なところで空振りの連続です。

 そうなると、気持ちはどんどんゴルフから遠ざかっていきます。

 ある日、昔のテニス仲間と一緒にコースに出かけ、そのスイングを見て驚きました。

 そのフォームの美しさ、正確さ。

 「いったい、どうすればそこまでになれるんだ?」

 と尋ねると

 「お前も1年間、まじめに練習場へ遭えば、間違いなく同じくらいにはなるよ」

 と言われ、こうなったら俺も1年間集中してやってみようと一念(1年?)発起。やり出してみるとこれが面白い。


 ゴルフというスポーツが面白いというより、ゴルフを通じて自分のことがわかってくるのが面白い。

 止まっているボールを打つのですから、結果はすべて自分の責任です。

 野球なら投手によって、また打者によって、自分の評価は変わってきます。

 でも、ゴルフの場合は自分だけが相手。

 今まで目にしたこともなかったゴルフ番組やゴルフ雑誌を読むうち、ゴルフはなんてメンタルなスポーツなんだと思うようになりました。

 50の手習いなので、スポーツも体から入らず、頭で考えることから入ります。

 止まったボールをいろんなふうに試みながら打つたび、お、これはひょっとして落語にも似てるぞ、と思ったり。

 ナイスショットを決めたときなど、いいオチを言って頭を下げて爆笑拍手をもらったときのような心持ち。

 でも、ゴルフ苦手期間が長かった私ですから、飲み屋で大きな声でスコアがどうの、何番アイアンだの、そういう話はしないように気をつけています。

 友人は言いました。お前のように仕事漬けになってきたような人間がはまると怖いんだよ、と。

 気がつくと、スケジュール帳を眺めながら、ゴルフの練習場へ行くわずかな時間を捻出しようとしている自分がいます。

 ただし、師匠談志はあまりゴルフが好きじゃないので、この話はここだけの内緒話にしておいてください。


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