常識の変化
2004年10月1日毎日新聞掲載
文:立川志の輔

 あ、ケガだ、擦り傷だ、となったとき、まず真っ先にするのは、傷口を消毒液で消毒した後、パイ菌が入らないようにガーゼで覆う、というのが常識でした。

 ところが、実は、傷口をガーゼではなくフィルムと同素材のもので覆ってケガを治すというフィルム療法なるものが一番早く治るというのです。

 一般家庭でなら、台所にあるラップで傷口を覆うと治りが早いということ。

 海外の論文に、ガーゼよりフィルムを貼った方が2倍早く治ったという報告もあるくらい。

 この実践をつい先日行いました。

 中学3年生の息子が自転車で転倒し、肘やら手の甲にかなりの擦り傷を負って帰宅。夜だったので自分で応急処置としてガーゼで血をぬぐい、そのまま1日放置していたらしくガーゼがはがれなくなり、さあ大変。顔をゆがめながらも痛みに耐え、なんとかガーゼをはがしたと思ったら、血とともに汁状のものが出てきます。何度拭いても次から次に出てくる汁。どうしたものか。で、私、突然思い出したのです。

 「ためして!ガッテン」で自分自身が説明したことがあったのを。

 そうだ、ラップを巻けばいいのだったな。

 うろ覚えだったので、スタッフに確認の電話を入れ、さっそく台所からラップを取り出し、息子の手に巻きつけました。

 以前、みなさんそして私もガッテンした理屈とは、ケガを治そうとして皮膚の下からしみ出てくる透明な液体「浸出液」をおろそかにしてはいけないということ。

 実は、浸出液は皮膚細胞を増やしてくれる働きをします。
               し
 この液体は体から自然に滲み出る薬なのです。

 従来のようにこれを拭き取って乾かしてしまうと、せっかくの自然治癒力を減らしていることになるのです。

 明らかに不衛生な場所でのケガでなければ、傷口を水洗いして、ラップで巻く。これが一番早く治る応急処置だいう、今までの常識を覆す方法を番組でお伝えしたのでした。

 が、実際に患子の腕にラップを巻いていると、親子して「ほんとかな?」と互いに顔を見合わせて苦笑する始末。

 頭では理解しても、長年の習慣は恐ろしいもので、100%納得できない自分がいます。

 大げさに言えば、銀行がつぶれたり、警察官がセクハラをしたり、野球界が1リーグになるのか、など常に変化は背中合わせ。

 確かなデータから引き出された新たな治療法と抜けきれない習慣の間で揺れてる自分。

 まだラップ療法3日目です。はてさて結果はどうなりますか。ガーゼの場合と並べて比べた上で結果を見られないのが今ひとつ残念。

 野球界も、今までの慣習にとらわれず、生きのいい企業にチームをゆだねてみる、という荒療治を実行してみたら、どうでしょう?


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