ガス欠渋滞をなこせ
2004年5月7日毎日新聞掲載
文:立川志の輔

 素人の運転が多くなって走りにくい、とタクシーの運転手さんがぼやくゴールデンウィーク。

 中でも素人が陥りやすいのは、その名も単純明快な「ガス欠」。

 こっちは急ぐから高速道路にのったのに、なぜか渋滞。

 イライラしながら、やっと動き出した車を走らせ、渋滞の原因だったらしい現場を横目に見れば、そこには車が1台。はは〜ん、ガス欠かあ、とわかったとき私は呟いたものでした。

 「ガソリンも満足に入れないで高速にのるような奴に車を運転する資格はない。これだけ人様に迷惑をかけているのだから、即免許を取り上げたっていいくらいのもんだ」

 ところが先日、私がその当人になりかけたのです。

 テレビ局に向かって自宅を出発、その日は信号もいくつか青で通過、調子いいなとなにげなく見たフロントメーターに、不気味に赤く点滅するのはガソリンスタンドのマークでした。

 ガソリンメーターの針は「E」の位置に。

 でも、都会だもの、国道246だもの、すぐにガソリンスタンドがあるさ、と最初は余裕しゃくしゃくでした。

 ところが驚いたことに、下馬から渋答までの上り線に、ガソリンスタンドが一箇所もありません。

 冷や汗が吹き出します。さあ、どうするか。

 いま、私がこの緊急事態から脱出できる最強の打開策は何か。

 スタジオでの番組収録開始時間が刻一刻と迫ってきます。

 どこかに車を置き去りにし、携帯で連絡を取り、弟子に取りに来させることにして、私はひとまずタクシーで目的地までいくか、道路の反対側に見えたガソリンスタンドにUターンして入るか、いや、もう少しガソリンは持つんじゃないか、という希望的観測も頭をよぎります。しかし、もしも次の瞬間にプスップスッという音とともにいきなり止まってしまったらどうする、私の車の後ろに長蛇の列ができ大渋滞をひきおこし、JAFもなかなか来なかったら……そばを通り過ぎていく車の運転手の冷たい視線をいっせいに浴びながら、うなだれ座る私……妄想が頭の中でふくらみます。

 結論から言いますと、なんとかガソリンは持ちこたえました。

 が、JAF(日本自動車連盟)に聞くと、平成14年度の全国の高速道路でのガス欠出動は2万4239件、一日平均68件だとか。

 いまやETCはもとより、車間距離が縮まると自動的にブレーキがかかるシステム、渋滞を教えてくれるカーナビゲーションなどなど、自動の機能は至れり尽くせり。

 にもかかわらず、ガソリン残量を正確に表示するというこんな単純なことができていないのです。せめて、非常のガソリンタンクを備え付けた車を開発してはもらえまいか。日本の技術でできないはずはない。いや、そりゃ、並段からガソリン量を注意しればいいようなものですが、なかなかそれができないのが人間だから。

 ……そうか、ガソリン残量がリッター単位でわかるメーター付き車を開発したとしても、売れ行きは伸びないのかな?


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